
転職を考える中で、求人情報に「入社祝い金〇万円!」の文字に惹かれたことはある方も多いでしょう。確かに魅力的な制度ですが、安易に飛びつくのは危険です。
入社祝い金の支給には様々な条件や注意点があり、高額な祝い金の裏には思わぬ落とし穴が潜んでいることも。そこで本記事では、入社祝い金の仕組みや受給条件、注意点、よくある質問などを詳しく解説します。

入社祝い金とは
入社祝い金とは、新しく入社する従業員に対して企業から支給される金銭またはギフト券のことです。特に人手不足が深刻な業界で多く見られます。
一見、求職者にとっては魅力的に映る入社祝い金ですが、実は注意すべき点も存在します。厚生労働省は、入社祝い金が求職者の適切な判断を阻害し、不適切な転職や早期離職を招く可能性があると指摘しています。
このような背景から、厚生労働省は職業紹介事業者による入社祝い金の支給を2021年4月から原則禁止しました。さらに、2025年からは規制を強化し、求人メディアなどへの掲載も禁止する予定です。
参考:https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/news_topics/jyukyuuchousei_030303.html

入社祝い金の仕組み
入社祝い金を受け取るには、いくつかの段階があります。
支給元
入社祝い金の主な支給元は以下の通りです。
支給元 | 説明 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
職業紹介事業者(転職エージェント等) | 厚生労働省の指針により、2021年4月から求職者への入社祝い金の支給は禁止されている。 | – | 規制対象のため、現在では受け取れない。 |
募集情報等提供事業者(求人サイト等) | 2025年4月から、求職者への入社祝い金の支給が原則禁止される予定。 | – | 今後、規制対象となる見込み。 |
企業 | 企業が独自に支給する場合がある。 | 企業から直接支給されるため、仲介業者による手数料などが発生しない。 | 企業によって支給条件や金額が大きく異なる。 |
求人情報を確認する際は、支給元をしっかりと確認することが大切です。
支給形態
入社祝い金には、いくつかの支給形態があります。求人を選ぶ際には、それぞれのメリット・デメリットを理解したうえで、自分に合った形態を選ぶことが大切です。主な支給形態は以下の通りです。
支給形態 | メリット | デメリット |
---|---|---|
現金 | 好きな用途に使える | 税金がかかる場合がある |
ギフト券 | すぐに使えて便利 | 使用できる店舗が限られる |
キャッシュバック | 研修費用などの負担を軽減できる | 還元率や条件を確認する必要がある |
その他(旅行券、無料宿泊券など) | 思いがけない特典を受け取れる | 換金できない場合がある |
また、支給形態によっては、祝い金相当額が給与に上乗せされて支給されるケースもあります。一見すると、まとまった金額を受け取れるため魅力的に見えるかもしれません。しかし、この場合、所得税や住民税などの税金が課される可能性があるため、注意が必要です。
支給時期
入社祝い金はいつ支給されるのか、気になるところです。実は、支給時期は企業や求人によって大きく異なり、一概に「いつ」とは言えません。以下に、よくあるパターンをまとめてみました。
支給時期 | メリット | デメリット |
---|---|---|
入社初日 | 即金でもらえる | 早期退職のリスクが高いと判断されることも |
試用期間終了後 | ある程度の期間、勤務が継続される | 待つ必要がある |
数ヶ月勤務後 | 企業側も安心して祝い金を支給できる | 待つ必要がある |
入社1年後 | 定着率が高い | 1年間待たなければならない |
このように、支給時期は様々です。企業によって試用期間の長さや祝い金支給の条件が異なるため、求人情報を確認する際に確認しましょう。

入社祝い金を受け取るための条件
入社祝い金は、主に人材紹介会社や転職エージェント、あるいは企業が独自に支給しています。それぞれ条件に関する内容もみていきましょう。
求人条件
入社祝い金を受け取れるかどうかは、求人条件を満たしているかどうかに大きく左右されます。求人条件には、職種や雇用形態、勤務地、勤務時間などがあり、入社祝い金の支給対象となる条件は求人によって異なります。
例えば、ある求人では、正社員として採用された場合のみ入社祝い金が支給される条件となっているかもしれません。一方、別の求人ではアルバイトやパートでも入社祝い金が支給される場合もあります。
また、特定の職種や勤務地で働く場合にのみ入社祝い金が支給されるといった条件が設定されている求人もあります。入社祝い金を受け取るには、応募前に求人票をよく読み、支給条件を満たしているかどうかの確認が重要です。
応募経路
応募経路によっては、入社祝い金がもらえないケースがあります。例えば「企業の公式ホームページなどから直接応募した場合にはもらえるが、求人サイトを経由した場合はもらえない」といったケースです。
ただし、前述の通り2025年4月1日からは、求人メディアなどを運営する募集情報等提供事業者に対しても入社祝い金の支給を禁止する予定です。つまり、今後、すべての求人サイトで入社祝い金がもらえなくなる可能性があります。
転職活動を行う際は求人サイトの掲載情報だけでなく、企業の公式ホームページなども確認しましょう。また、応募前には採用担当者に直接問い合わせ、入社祝い金について確認することも有効です。
勤務期間
入社祝い金を受け取るには一定期間、働き続ける必要があります。この期間は求人によって異なり、数ヶ月から1年程度が一般的です。
中には、試用期間終了後や数ヶ月勤務後といった条件で祝い金が支給される求人もあります。期間の長短は、祝い金の金額や企業の事情によって設定されます。
祝い金の支給前に退職してしまうと、祝い金を受け取れない場合があります。求人応募前に、自分がその期間まで働き続けられるか、しっかりと検討することが重要です。

入社祝い金に関する3つの注意点
入社祝い金は魅力的に見えますが、注意すべき点もあります。安易に飛びつかないように、下記に注意点をまとめたので確認しましょう。
1.祝い金が高額すぎる
入社祝い金は、転職活動における魅力的な特典の1つですが、高額すぎる場合には注意が必要です。
高額な祝い金は一見魅力的に見えますが、その背景には注意すべき点が存在します。厚生労働省の調査によると、入社祝い金を支給する企業の中には、以下のような問題点が見られました。
問題点 | 説明 |
---|---|
短期離職の増加 | 高額な祝い金に釣られて入社したものの、仕事内容や職場環境が合わず、短期間で離職するケースが増加。 |
企業の負担増加 | 祝い金の原資は企業の負担となるため、高額な祝い金は企業の経営を圧迫する可能性がある。 |
求職者間の不公平感 | 祝い金の有無や金額によって、求職者間に不公平感が生じる可能性がある。 |
祝い金の金額だけで転職先を決めるのではなく、仕事内容や企業文化、待遇などを総合的に判断することが重要です。
2.求人内容とのミスマッチ
高額な入社祝い金につられて応募したものの「実際の仕事内容が求人票と大きく異なっていた」というケースは少なくありません。
入社祝い金は、人手不足の企業が採用を強化するために利用されるケースが多いです。特に、労働条件が厳しかったり、特殊なスキルが必要な職種では、祝い金を目玉にして応募者を増やそうとする傾向があります。
そのため、魅力的な祝い金に目がくらんで安易に転職を決めてしまうとミスマッチが生じる可能性があります。最悪の場合は早期退職に繋がり、せっかくの祝い金も無駄になりかねません。
3.祝い金目当ての転職
転職理由が入社祝い金のみの場合は注意が必要です。入社祝い金は、転職活動における一時的な金銭的メリットでしかありません。
本当にその仕事内容に興味があるか、自分のキャリアプランに合致しているか、企業文化に共感できるかなどを無視して転職してしまうと、入社後にミスマッチを感じて早期退職につながる可能性が高まります。
入社祝い金はあくまでも補助的なものと捉え、転職の際は仕事内容や企業風土、将来のキャリアプランなどを総合的に判断することが大切です。

入社祝い金でよくある3つの質問
入社祝い金に関するよくある質問として、確定申告の必要性や退職時の扱い、金額の上限について解説します。
質問1.祝い金は確定申告が必要?
入社祝い金を受け取った場合、確定申告が必要かどうかは、支給元と支給形態によって異なります。
支給元 | 支給形態 | 確定申告 |
---|---|---|
企業 | 給与 | 不要(年末調整で処理) |
企業 | 一時所得 | 場合により必要 |
人材紹介会社等 | 一時所得 | 場合により必要 |
まず、企業から給与として支給される場合は所得税が源泉徴収されるため、確定申告は不要です。年末調整で精算されます。
次に、企業または人材紹介会社等から一時所得として支給される場合は、金額によっては確定申告が必要になる場合があります。一時所得とは、営利を目的としない偶発的な所得のことです
入社祝い金は一時所得に該当し、50万円の特別控除後の金額が課税対象となります。つまり、受領した入社祝い金から50万円を差し引いた金額がゼロまたはマイナスであれば確定申告は不要ですが、プラスであれば確定申告が必要になります。
入社祝い金 | 特別控除 | 課税対象額 | 確定申告 |
---|---|---|---|
50万円以下 | 50万円 | 0円以下 | 不要 |
50万円超 | 50万円 | 0円超 | 必要 |
質問2.祝い金を受け取った後に退職したらどうなる?
入社祝い金を受け取った後に早期に退職した場合、祝い金の返還を求められる可能性があります。返還義務の有無や条件は、企業によって異なりますので、事前に確認することが重要です。
多くの場合、雇用契約書や就業規則に返還に関する規定が記載されています。祝い金を受け取る前に、必ずこれらの書類を確認し、不明点があれば質問してみてください。
質問3.祝い金の金額に上限はある?
結論からいうと、法律で定められた上限額はありません。しかし、実質的には上限があると考えられます。
職業紹介事業者や募集情報等提供事業者が提供する入社祝い金については、2025年からの法改正により、原則禁止となります。ただし、社会通念上相当と認められる範囲であれば提供が可能です。
この「社会通念上相当な範囲」については明確な金額が定められているわけではなく、厚生労働省が個々のケースを判断します。参考資料によれば、アンケート回答の謝礼として500円程度の電子ギフト券、転職フェアへの来場者に対する500円程度の電子ギフト券などは相当な範囲とされています。
一方、企業が独自に支給する入社祝い金については、法律による上限はありません。企業は採用活動の一環として、自社の判断で金額を設定できます。

まとめ
本記事では入社祝い金の仕組みや受給条件、注意点、よくある質問などを解説しました。高額な祝い金に目を奪われず、仕事内容や企業文化、待遇などを総合的に判断し、賢く転職活動を進めることが大切です。
特に、支給条件や時期、早期退職時の返還義務など、求人ごとに異なるため、応募前に必ず確認しましょう。なお、株式会社ベルジャパンは、有料職業紹介業のなかでも豊富な実績ときめ細やかなサポート体制を強みとしており、求職者・企業双方から高い評価をいただいております。独自のネットワークを活かして非公開求人を含む多様な案件をご紹介できる点が大きな特長です。さらに、専任コンサルタントがキャリアやスキル、ライフスタイルなどを詳しくヒアリングすることで、一人ひとりに最適化されたサポートを実現しています。⇛ベルジャパンに相談する

